あらすじ
一人暮らしの美波は、冷蔵庫の奥に見覚えのない小さなドアを見つける。
棚を外すたび、ドアは少しずつ手前へ近づいていた。
友人の玲奈に相談しながら庫内を確かめると、向こう側から同じ部屋の生活音が聞こえてくる。
やがて美波の背後にある台所から、冷蔵庫を開ける音がした。
美波
玲奈、ちょっと起きて。
玲奈
起きてる。
どうしたの?
美波
冷蔵庫の中に、ドアがある。
玲奈
冷凍庫の扉じゃなくて?
美波
野菜室の奥。
棚の向こうに小さい木のドア。
玲奈
そんなの昨日までなかったよね?
美波
なかった。
取っ手までついてる。
玲奈
触らないで。
写真は撮れる?
美波
撮ったけど、写真だと普通の壁に見える。
玲奈
冷蔵庫、閉めよう。
美波
閉めた。
でも中でノックされた。
玲奈
何回?
美波
三回。
今度は向こうから冷蔵庫を開ける音がした。
玲奈
向こうにも冷蔵庫があるの?
美波
たぶん。
私の部屋と同じ音がしてる。
玲奈
テレビとか?
美波
今、向こうでお湯が沸いた。
私のケトルも勝手についた。
玲奈
コンセント抜いて外に出て。
美波
抜いた。
でも沸く音は続いてる。
玲奈
その小さいドアは?
美波
さっきより手前にある。
棚を一段押し出してる。
玲奈
もう冷蔵庫を見ないで。
美波
待って。
ドアの下から紙が出てきた。
玲奈
何て書いてある?
美波
「そっちは寒い?」って。
私の字で書いてある。
玲奈
返事しちゃだめ。
美波
書いてない。
紙ごと冷蔵庫を閉めた。
玲奈
よし、そのまま部屋を出て。
美波
玲奈。
今、背後の台所で冷蔵庫が開いた。
でも私の冷蔵庫は目の前で閉まってる。

