雨の日だけの駐輪場

あらすじ

雨の夜、千夏は駅前に見覚えのない地下駐輪場を見つける。
中には自分の自転車と同じものが、古い順に何台も並んでいた。

友人の恵と話しながら出口を探すが、地上へ続く坂は同じ場所へ戻ってしまう。
最後の一台には、千夏が今持っている傘が掛けられていた。

千夏
千夏

恵、駅前の地下駐輪場って知ってる?

恵

地下?
あそこは平面しかないよ。

千夏
千夏

雨宿りしようとしたら入口があった。

恵

別のビルじゃない?

千夏
千夏

駅の看板がある。
でも中に誰もいない。

恵

早く出たほうがいいよ。

千夏
千夏

私の自転車が置いてある。

恵

乗ってきたの?

千夏
千夏

今日は電車。
自転車は家にあるはず。

恵

鍵は合う?

千夏
千夏

合った。
でも隣にも同じ自転車がある。

恵

同じ型なだけじゃない?

千夏
千夏

傷の場所まで同じ。
その隣にもある。

恵

何台?

千夏
千夏

七台。
奥に行くほど古くなってる。

恵

出口に戻って。

千夏
千夏

坂を上ったのに、
また同じ駐輪場に出た。

恵

管理室は?

千夏
千夏

無人。
モニターだけついてる。

恵

何が映ってる?

千夏
千夏

入口で傘をたたむ私。
でも映像の日付は来週。

恵

今の千夏は映ってない?

千夏
千夏

一番端の画面にいる。
自転車を一台ずつ数えてる。

恵

画面と同じ動きしてる?

千夏
千夏

してない。
画面の私は八台って数えた。

恵

今は七台なんだよね?

千夏
千夏

うん。
でも奥でスタンドが立つ音がした。

恵

見ないで、坂を走って。

千夏
千夏

八台目がある。
私の傘が掛かってる。
なのに手に持ってた傘が消えた。