二十五段目

あらすじ

帰宅した凛は、アパートの階段がいつもより一段多いことに気づく。
二十四段しかないはずなのに、何度数えても、見覚えのない二十五段目が混じっていた。

友人の麻衣に相談しながら階段を調べると、余分な段は少しずつ場所を変えていく。
凛がそれを飛び越えて部屋へ戻ったあとも、階段を上る音だけは止まらなかった。

凛

麻衣、まだ起きてる?

麻衣
麻衣

起きてるよ。
どうしたの?

凛

うちのアパートの階段、
一段増えてる。

麻衣
麻衣

一段?
どういうこと?

凛

二階まで二十四段なの。
毎日使うから覚えてる。

麻衣
麻衣

数え間違いじゃない?

凛

三回数えた。
どう数えても二十五段ある。

麻衣
麻衣

どこか壊れて、段差ができたとか?

凛

違う。
途中に一段だけ、色の黒い段がある。

麻衣
麻衣

そこ踏まないほうがいいよ。

凛

もう踏んだ。

麻衣
麻衣

何かあった?

凛

上ったはずなのに、
スマホには「一階下りました」って出た。

麻衣
麻衣

それ、かなり変だよ。
いったん外に出たら?

凛

出られない。
上っても下りても、二階の踊り場に戻る。

麻衣
麻衣

エレベーターは?

凛

ない。
古い二階建てだから。

麻衣
麻衣

大家さんに電話してみて。

凛

聞いた。
階段は昔から二十四段で、工事もしてないって。

麻衣
麻衣

じゃあ、黒い段を避けて下りて。

凛

さっきは真ん中にあったのに、
今は一番上に移ってる。

麻衣
麻衣

段そのものが動いたの?

凛

わからない。
表面に濡れた足跡がついてる。

麻衣
麻衣

足跡は、どっち向き?

凛

かかとが私のほう。
つま先は、階段横の壁に向いてる。

麻衣
麻衣

そこだけ飛び越えて。
絶対に踏まないで。

凛

飛び越えた。
今度はちゃんと部屋に戻れた。

麻衣
麻衣

よかった。
鍵かけて、今日はもう見に行かないで。

凛

鍵はかけた。
でも廊下で一段ずつ足音がしてる。
二十四まで数えたあと、今、押し入れの中で二十五段目が鳴った。