交番の拾得物

あらすじ

夜勤中の優斗は、交番の拾得物棚に自分の財布があることに気づく。
財布には、数時間後に発行されるはずの紛失届が添えられていた。

同僚の亮と連絡を取りながら中身を確認すると、棚には優斗の持ち物が次々と増えていく。
最後の空欄には、拾得場所として交番の机の下が指定されていた。

優斗
優斗

亮、今日の拾得物って何件?

亮

三件。
引き継ぎ表にあるよ。

優斗
優斗

棚に四つある。

亮

何が増えてる?

優斗
優斗

黒い財布。
私の財布と同じ。

亮

ポケット確認した?

優斗
優斗

ある。
手元にも同じ財布がある。

亮

中身は?

優斗
優斗

免許証も私。
写真だけ目を閉じてる。

亮

触らないほうがいい。

優斗
優斗

紛失届もついてる。

亮

届出人は?

優斗
優斗

私。
受付時刻は二時間後。

亮

未来の紛失届?

優斗
優斗

字も私の字。

亮

上司に連絡して。

優斗
優斗

圏外になった。
固定電話も発信できない。

亮

外に人はいる?

優斗
優斗

さっきから同じ人が交番の前を歩いてる。

亮

顔は見える?

優斗
優斗

毎回、拾得物を一つ置いていく。

亮

何を置いた?

優斗
優斗

私の腕時計。
今つけてるものと同じ。

亮

棚から離れて。

優斗
優斗

次は家の鍵。
その次は警察手帳。

亮

もう交番を出て。

優斗
優斗

出口に新しい紛失届が貼ってある。

亮

拾得物は何?

優斗
優斗

品名は空欄。
拾得場所だけ「交番の机の下」。
今、そこから誰かが私の靴をつかんだ。